ナウゼリンとブスコパンの併用について。逆の作用機序だがあり?
30歳男性、消化器科。 Rp1 ナウゼリンOD(10) 3T Rp2 ブスコパン(10) 3T |
ナウゼリンとブスコパンって逆の作用ですよね?
併用ってありですか?
と新人薬剤師君が言いました。
いいんじゃない。よく見る処方だよ。
理由なき、最低の返答・・。
私も前々からこの組み合わせを見る度、
消化管を動かしたいのかい?止めたいのかい?
どっちなんだい!?
と思っていましたが、
まぁ、吐き気と腹痛があるんだなと適当に解決していました・・。
これを機にちょっと調べてみましょう。
ー患者さんの状態ー
吐き気や腹痛、軟便、微熱など。
薬で様子見とのこと。
併用薬はない。
まず、
ナウゼリンの作用機序は?
1、消化管に存在するドパミン(D2)受容体を遮断することによってアセチルコリンの分泌を促進。
→ 消化管運動促進作用。
2、CTZ(化学受容体引き金帯)に存在するドパミン(D2)受容体を遮断。
→ 制吐作用。
んで、次に、
ブスコパンの作用機序は?
1、アセチルコリンが消化管のムスカリン(M3)受容体に結合するのを競合的に阻害し、副交感神経の刺激を抑える(抗コリン作用)。
→ 消化管運動抑制作用。
ほうほう、作用機序の『1』は、確かに逆の作用ですが、
ナウゼリンの『2』の制吐作用は拮抗しなさそうですね。
ナウゼリンの添付文書の併用注意に、
『抗コリン剤の消化管運動抑制作用が本剤の消化管運動亢進作用と拮抗する。』
措置方法として、
『症状により一方を減量、中止する。又は必要に応じて間隔をあけて投与する。』
と書かれてます。
ん?間隔・・、間隔・・。
間隔ってどれぐらいなの!?
具体的な時間は書いてませんが、
協和発酵キリンのHPのナウゼリンのよくある医薬品Q&Aに、
ナウゼリンが食前、ブスコパンが食後など時間をずらす工夫が必要。
って書いてますね。
食前と食後ほどの間隔でいいとな。
今回の上記の処方と一緒で、通常は添付文書通りナウゼリンは食前で処方されますし、ブスコパンはいつとは決まってないですけど食後で処方されること多いのではないでしょうか。
正直工夫でも何でもないw
ってか、吐き気+軟便があれば、ナウゼリンの消化管運動促進作用で軟便が悪化してしまいそう・・。
むしろ、ブスコパンを同時に飲んで打ち消した方がいいのでは??
と、自分なりに考えてみましたが、
同じ協和発酵キリンのHPにこんな試験の報告も載ってます。
抗コリン剤はナウゼリンの作用機序であるアセチルコリンの遊離促進の効果を打ち消すため、運動亢進作用は減弱するが、嘔気、嘔吐に対してはCTZに対する作用が期待でき併用は可能と考えるという報告や、健常男性において、13C呼気テストを用いてナウゼリンと抗コリン剤を同時投与した場合に、胃排出がどのように変化するかを評価したところ、過度に胃排出を抑制しない事が示されたと言う報告がある。
と。
ってことで、併用に関しては問題ないですね。