タケキャブとPPIとH2ブロッカーの作用機序の違いを図でまとめてみる。

2016-03-22内服薬のこと

前回、ボノサップ発売準備中ってことで、いろいろ調べてまとめましたけど、どうもタケキャブとかPPIの作用機序がピンときませんでしたね。
そもそも、胃酸の分泌の仕組みが・・、うーん??って感じなのが問題・・。
タケキャブをカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)と呼ばれる新しい機序!なんて言ってましたが、
カリウムイオンって胃酸の分泌に関係あったっけ??

きっと国家試験終わったばかりのころは覚えていたんでしょうけど、もう10年以上も経てば忘れてしまってることが大半な訳で・・。
ここらで、復習がてら胃酸の分泌の仕組みと胃酸分泌を抑える薬の作用機序についてまとめたいと思います。

図に書いたら意外と覚えますね。
胃酸分泌の仕組みはこんな感じ。

胃酸分泌の仕組み、機序

胃の壁細胞内において、ヒスタミンアセチルコリンガストリンの酸分泌刺激物質がそれぞれの受容体へ結合すると、ヒスタミンの刺激により細胞内のcAMPが、またアセチルコリンとガストリンの刺激によりCa2+上昇する。
これらのシグナルによって,K-ATPase(プロトンポンプ)が活性化され、胃の壁細胞内から分泌細管にを放出し代わりにを取り込む。
放出したと別経路で分泌細管に放出されたClとからHCl(塩酸)が産生され、胃へと分泌される。

なるほどなるほど。
カリウムイオンも関係してましたねw

あとは、この仕組みのどこに薬が作用するかですけど、そこは流石にわかりますよ。
まぁ、一応、図を使いまわして・・。
タケキャブ、PPI、H2ブロッカー作用機序

ブロッカーは赤×でその名の通り、受容体をブロックすることにより、その後に続くヒスタミンの刺激による一連の反応を阻害し胃酸分泌を抑制する。
アセチルコリン、ガストリン、ヒスタミンの中で胃酸分泌の割合的にはヒスタミンが大きいので、アセチルコリンやガストリンを抑えるより効果的ですね。

まぁ、それよりも、最終段階に位置する黒×のところ、H,K-ATPase(プロトンポンプ)の働きを止めてしまえば3つ分一気に抑えられる訳で・・。
そこに作用するのが、従来のPPI(プロトンポンプインヒビター)やタケキャブ(ボノプラザン)なんですね。
プロトンポンプを阻害しているということで言えば、タケキャブもPPIの一種なんでしょうが、若干作用機序が異なってます。
PPIは酸で活性体へ変換され、プロトンポンプとS-S結合することでプロトンポンプを阻害し胃酸分泌を抑制する。
タケキャブは酸による活性化を必要とせず、カリウムイオンに競合的な様式でプロトンポンプを阻害し胃酸分泌を抑制する。
カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)と呼ばれる新たな作用機序を有する新しいカテゴリーのプロトンポンプ阻害薬らしい。

とまぁ、機序の違いはSーS結合なのか、カリウムイオンに競合的な様式でってのかなんですけど・・、特徴としてはそこあまり関係ないんですかね。

前回の復習も込みで、最後にまとめ。

タケキャブと従来のPPIの特徴の違い。

1.タケキャブは酸による活性化が必要ないので、投薬1日目から強力な酸分泌抑制作用を有する。
一方、従来のPPIは酸による活性化が必要なので、血中濃度が安定し最高レベルまで達するのに3、4日必要らしい。
症状のあるときのみに服用するようなオンデマンド療法には、効果の早いタケキャブが向いている。

2.タケキャブは塩基性が強く酸性環境下でも安定なため、分泌細管に高濃度に集積して長時間残存する。
そのため、血中薬物濃度の低下後に、新たに分泌細管の膜上へ移動してきたプロトンポンプも阻害することができると考えられる。
ってわけで、持続的に胃酸分泌を抑制し、胃内のPH上昇させる。
一方、従来のPPIは酸性環境下では不安定であり、分泌細管に長く留まることができない。
そのため、血中薬物濃度の低下後は、新たに分泌細管の膜上へ移動してきたプロトンポンプを阻害することができないと考えられる。
胃酸分泌の効果を高めるために、PPIを分2で服用した方が症状を取り除けるという臨床研究もある。

3.タケキャブは主にCYP3A4で代謝されるが、CYP2C19が代謝に関与する従来のPPIに比べて、効果発現の個人差が少ない。
CYP2C19は、その人によって代謝の速度が異なる3つの遺伝子多型が存在するので、どの遺伝子かによってPPIの効き目が違ってきます。
パリエットは他の代謝経路がメインなのでPPIの中では影響が少なめ。